2026.07.20
テレビを置かない理由 ― ふたりの時間をつくるために ―
宿にお越しいただいたお客様から、時折こんなお声をいただきます。
「テレビがないのですね」と。
少し驚かれながらも、その理由を尋ねてくださることがあります。

時の宿すみれでは、あえてお部屋にテレビを置いておりません。
それは「不便を楽しんでいただきたい」ということではなく、
ここで過ごす時間を、より豊かに感じていただきたいという思いからです。
日々の暮らしの中で、私たちは多くの情報に囲まれて過ごしています。
気がつけば、何気なく画面を眺め、時間が過ぎていくことも少なくありません。
けれど旅先では、ほんの少しだけ、その流れから離れてみる。
それだけで、感じ方が変わることがあります。
窓の外に広がる景色をゆっくり眺めたり、
湯上がりにほっと一息ついたり、
言葉を交わす時間が自然と増えていったり。
「今日はどこへ行こうか」
「お料理、美味しかったね」
「明日はどうしようか」
そんな何気ない会話から、
いつしかご両親のことや、兄弟のこと、
家族のことを話しているかもしれません。
これまでのこと。
これからのこと。
普段はなかなか話す機会のないことも、
旅先だからこそ、ゆっくり話せることがあります。

ふと気づけば、普段なら画面を見ている時間に、
お互いの顔を見ながら話している。
笑いながら話すこともあれば、
少し真剣な話をすることもある。
ふたりだからできる話を、
ふたりの時間の中で、たくさんしてほしい。
そんな時間が、旅の中にはあってもいいのではないでしょうか。
何かを「しよう」としなくても、
ただそこにある時間を味わうこと。
そうした過ごし方の中に、心がほどけていく瞬間があるように思います。

最初は少し手持ち無沙汰に感じられるかもしれません。
けれどしばらくすると、不思議とその静けさに馴染み、
穏やかな時間の流れを感じていただけるようです。
「久しぶりにゆっくり話ができました」
「時間を気にせず過ごせました」
そのようなお声をいただくこともございます。
時計もテレビもない空間で過ごすひとときは、
日常とは少し違った感覚をもたらしてくれます。
過ぎていく時間を追うのではなく、
今この瞬間に身をゆだねること。
それは決して特別なことではありませんが、
日々の中では、意外と難しいことなのかもしれません。

この宿でのご滞在が、
少しだけ立ち止まり、ご自身の時間を取り戻すきっかけとなれば嬉しく思います。
何もないからこそ感じられるもの。
その静けさごと、お楽しみいただけましたら幸いです。
今日も読んでくださり、ありがとうございます。
おふたりの時間が、やさしく、あたたかく流れていきますように。。
すみれのあやこでした
Categories : 時の宿すみれ